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あしあと

    市制施行70周年に寄せたメッセージ

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    • [更新日:]
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    悪性新生物を減らして健康長寿尾鷲市のまちづくり

     尾鷲市市制施行70周年、誠におめでとうございます。

     斬新な市政に取り組んでおられます加藤千速市長に九鬼中学校の同級生として心より敬意を表します。

     私は、市制施行前の九鬼村早田の出身です。伊勢高等学校から岡山大学医学部に進み、岡山大学第一内科助教授、岡山市立市民病院院長代理、理事を経て、現在は倉敷シティ病院長として内科医を続けています。

     私が小さかった当時、尾鷲市街に行くには九鬼を通り八鬼山を徒歩で越えるか、巡航船しかなく、そのため、早田の人々は市立病院へ行くことはめったにありませんでした。私は小学校の低学年の時に一度だけ受診したことがあります。それは、従兄の結婚式の日に鰤の煮つけを食べすぎ、お腹に沢山のおできが出来た時のことです。父に連れられて治療を受け、背負われて帰る時に、父が「なんでもいいから好きなものを言いなさい」と。その時、初めてバナナを食べる事が出来ました。

     市民病院へ簡単に行けなかった当時の悲しい思い出があります。
     同級生のM君とかなり遠い山に自然薯掘りに行った時のことです。M君の妹さんは朝から腹痛がありました。帰る途中に早田から九鬼に向かう早田でたった一つの駄菓子屋(M屋)さんのおばさんが、「あんたら何しとるの。妹さんが亡くなったのに」と。私とM君は山道を必死に走って村に帰りました。当時を振り返ってみると、その後は、紀勢本線も開通し、早田から九鬼へのバス道も出来て尾鷲市街が近くなりました。

     さて、(市制施行70周年記念事業の)「公式SNSカウントダウン事業」へのお誘いを市長から頂きました。大変光栄なことですが、一方、私のような者がと言う躊躇がありました。迷った挙句、医師としての立場から尾鷲市の病気について、「がんねっと三重」や「みえDataBox 人口・世帯の動き」にあります「尾鷲市の現状」を参考にして、書かせていただくことにしました。

     先ず、日本人の死因はがんによるものが30%弱と最も多く、更にがんによる死亡は、右肩上がりに上昇しています。
     三重県では、がん全体の死亡割合は全国平均と比較して2.5ポイントくらいは低くなっています。そのような中で、三重県におけるがん死亡者数は、肺がんが最も多く、次に大腸がん、胃がん、膵がん、肝がんとなっています。それぞれのがんの全国の死亡率を100として、三重県で全国平均を上回っているがんは、男性では、大腸がん(102)、肺がん(100.5)、女性では胃がん(112.3)となっています(がんねっと三重より)。

     それでは、三重県の中での尾鷲市はどうでしょうか?三重県との標準化死亡比は、男性では肝疾患(133)、心疾患(123)、糖尿病(115)、悪性新生物(111)、脳血管疾患(109)、女性では、心疾患(122)、悪性新生物(108)、肝疾患(110)、脳血管疾患(102)、糖尿病(101)が上回っています。我が国の死亡につながる疾患の主なものの殆どが尾鷲市では三重県の標準より高いことが示されています。次に悪性新生物をみてみましょう。三重県の標準化死亡率と比較して、男性では、前立腺がん(182)、膵臓がん(134)、胃がん(117)、大腸がん(107)、肝がん(105)が標準を上回り、肺がん(96)は低くなっています。一方、女性では、子宮がん(180)、肝がん(130)、胃がん(117)、肺がん(103)が三重県の標準より高く、乳がん(84)、大腸がん(76)が低くなっています(みえDataBox 人口・世帯の動)。

     がんは早期発見すれば、かなり完治できるようになりました。最も大事なことはきちんと検診を受けることであることは言うまでもありません。
     前立腺がんは男性で最も発生数が多いがんですが、検診で腫瘍マーカーのPSAを測定することで早期がんの発見が可能になります。
     女性に最も多い子宮がんのうち約70%が子宮頸がんです。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で、最近は20~30歳代の若い女性に増えていて、30歳代後半がピークとなっています。日本産婦人科学会では、HPVワクチンによる一次予防がまず大切で、次に子宮頸がん検診で早期に発見し早期治療が重要であると言っています。テレビでも普及を呼び掛けていますね。
     胃がんは全国的には減少傾向にありますが、尾鷲市では、まだまだ多いようです。胃がんもヘリコバクターピロリ菌感染が問題です。呼気試験、血液、便や組織検査により陽性が判明すれば、除菌することで胃がんの発生を減少させることが出来ます。
     膵臓がんは、最も厄介ながんです。定期的画像検査で1.5cm以下の小さながんを見つけることが重要です。
     最後に肝がんです。多くの肝がんは男女ともに肝疾患死亡比率が三重県の標準より高いことと関連があります。これまでの肝がんは、B型、C型肝炎ウイルス感染による肝臓病の方に多くは発生していました。C型肝炎は飲み薬で完治することが出来、B型肝炎も同様に内服薬で落ち着かせることが出来ます。肝臓は沈黙の臓器とも言われているように、かなり進行しないと症状が出ません。まだ肝炎ウイルス検査をされていない方は是非一度受けてみてください。抗ウイルス治療には公的援助も出ますし、B型肝炎感染では、母児感染でないことが明らかになれば、国から保障を受ける事も可能です。

     さて、肝がんですが、ウイルスを駆除できるようになり、ウイルス関連肝疾患からの発がんは減少してきました。そして、アルコールや飲酒をしない非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis(NASH)からの発がんが増加しています。現在は,飲酒歴がある人も含めて代謝機能障害関連脂肪肝疾患(Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease, MAFLD)と呼ばれる脂肪肝からの発がんが増加して70%を占めるようになってきました。MAFLDは、①肥満または過体重、②2型糖尿病、③2種類以上の代謝異常(腹囲 男性/女性 90/80cm以上、高血圧症、脂質代謝異常症、耐糖能異常、糖尿病予備軍)のいずれかが該当します。飲酒歴のあるMAFLDでは、肝臓病の他に動脈硬化性心血管疾患や肝臓外悪性新生物(食道がん、胃がん、大腸がん、胆のうがん、膵臓がん、乳がん、子宮体がん、甲状腺がん)が増加することが明らかになりました(国立がんセンター 科学的根拠の基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究班)。

     また、喫煙者では、アルコールの摂取量が増えるほど発がんのリスク高まることや進行が速まることも明らかにされました(多目的コホート研究、JPHC Study)。日本肝臓学会では、奈良宣言2023で、肝機能の一つであるALTが31IU/l以上の人達を拾い上げ、必ず医師を受診し、Stop CLD(Chronic liver Disease:慢性肝臓病を防ぐ)の宣言をおこないました。

     最後に、アルコール多飲を含めた代謝異常(MAFLD)が肝臓がんは勿論、それ以外の臓器の発がんやその進行に関連すること、また、命に大いに関係する心血管疾患の発生にも関与することが明らかになりました。今から2000年も前の古代中国「新朝」皇帝故事成語で「酒は百薬の長」と言われてきましたが、この言葉の後に「過ぎたるは百薬の長ならず」とあるそうです。更に、吉田兼好は、徒然草の中で「百薬の長とはいへど、よろずの病は酒でこそ起これり」と著しています。
     WHOは、一日のアルコールの適量は20gと言っています。これは、日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎110ml、ウイスキー60mlに該当します。肝臓学会では、男性60g、女性40g以上の飲酒がある場合をアルコール性肝障害と定義しています。出来ればそれぞれ40、30g以下の量を守り、「適量は20g」を胸に休肝日を設けるなど適切な飲酒習慣を守り、適度な運動なども心掛けてMAFLDを予防しましょう。


      がんは生活習慣病と捉えてがんの発生を減らし、早期発見のための適切な検診を実行する健康長寿尾鷲市の町づくり!!



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