~ 尾鷲市立天文科学館より ~
中秋名月と土星
9月17日は中秋の名月でした。月齢は14.4で、次の日が満月でした。旧暦の8月15日を中秋名月としていることと、月は楕円軌道を通っているため、実際の月齢と一致しないことが多くあります。ちなみに17日の地心距離は359,633kmで今年2番目に近い19日(357,477km)直前だったので、ほぼ占星術でいうスーパームーンでした。81cm望遠鏡では最低倍率でも入りきらず、少しはみ出た満月が見えました。
月のすぐ右上に明るい星があり、見ていただきました。輪が細くなった土星でした。輪はさらに細くなり、来年3月と11月にほとんど見えなくなります。(輪の消失)
土星の衛星数をご存じですか?今年5月の段階で、なんと146個になり木星の79個を大きく上回っています。理科年表には暫定値として木星95個、土星149個と載っています。ちなみに昨年の年表には確定値として72個、66個が載っています。
木星と土星の周辺では、激しい発見競争が行われているようです。
小惑星ビエノールの掩蔽観測
天文館の観測結果が、国際的天文学術誌(Astronomy & Astrophysics July 15, 2024)の論文に載りました。
2022年12月27日早朝に起きた小惑星ビエノールBienor(54598)の掩蔽(えんぺい)は、日本から始まりユーラシア大陸を抜けスペインで終わりました。日本では東紀州を中心に、近畿地方を通過しました。世界で観測登録は30を超えましたが、観測に成功したのは日本では尾鷲、津、宇陀(奈良)、ヨーロッパではベルギー3、フランス1でした。大陸を跨ぐ、壮大な天文現象でした。
※掩蔽;天体が背後の天体を隠す現象。今回は小惑星が恒星を隠した。
観測結果は集計され、論文として発表されました。細長い天体の姿が見えてきました。尾鷲の観測は南限近くでしたので、大きさの推定に役に立っているはずです。論文には 「Owase Mie」が5箇所載っています。
現象はまず尾鷲で観測され、影は6分30秒かけて大陸を横切り、フランスSalviaの観測で終わっています。
ビエノールは観測数が少なく、今までの観測で最大103~198kmとされていた、やや大きい小惑星です。
今回の観測では図上で測ると293kmとなり、今まで考えられていたより大きいことが分かりました。
ちなみに、ハヤブサがサンプルリターンに成功した小惑星イトカワは0.5kmです。
各観測点の観測結果。最下行が尾鷲の観測値。
※1/1000秒まで時刻を合わせます。
引用:Astronomy
& Astrophysics July 15, 2024
掩蔽は、世界遺産登録20周年を迎えた「熊野古道」から始まり、サンティアゴ=デ=コンポステラ巡礼道で終わっています。
なにか、不思議な縁を感じますね。
(市制70周年に現れた彗星
最近の星の世界(2024年5月)
最近の星の世界(2024年7月) も参照)
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