最近の星の世界(2021年5月)
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~ 尾鷲市立天文科学館より ~
天体のまきおこす
フシギや偶然には、
さまざまなカタチが
秘められていたり
します……
それでは中村山からの天体解説、湯浅さん、どうぞよろしくおねがいしま~す!
おとめ座の『ハート型』
はい こんにちは。天文科学館 撮影および解説担当、天体観測指導員 湯浅祥司です。
では 今回もまいりましょう 「最近の星の世界」。
銀河による「ハート型」
昨年5月、おとめ座に「ハート形」のアステリズム(星群)が見つかりました。
天文科学館HP「天体アルバム~最近の星の世界(2020年5月-3)」
この時点では「見ぃーつけた」という程度の意味だったのですが、その後ハート形を構成する20個の天体をくわしく調べたところ、おとめ座銀河団を構成する銀河であることが確認できました。星群に銀河系の恒星は含まれず、広大な夜空のカンバスに描かれた「銀河によるハート形」であることがわかりました。
おとめ座方向の、およそ6000万光年彼方に1300~2000個の銀河の大集団があり、「おとめ座銀河団」と呼ばれています。数ある銀河団のなかでは近い存在というか、じつは私たちの銀河も、その片隅にある一員なのです。中心にはM87銀河があります。2019年4月にその中心に超大質量のブラックホールが発見された、記憶に新しい天体です。M87の大きさは私たちの銀河系とおなじくらいですが、質量が1桁大きく、「銀河団の主」と呼ばれることもあります。今回の星群ではハート形の中央に鎮座しており、なんとも不思議な一致にみえます。
天体の確認は、つぎのように行いました。
構成する銀河はもっとも暗いものは13等星で、恒星で9等までの「ウラノメトリア」のような、製本された星図には載っていません。パソコンなどのシミュレーションソフトで限界まで下げると、17等までわかります。ところが、形状はグループ化されたシンボルマークとして表示されているので、実際写っている星像と同定できません。そこで21等まで写っている「パロマー写真星図(CD版)」がありましたので、こちらで最終確認しました。
ハート形を構成する20個の星群は、すべて星雲であることが確認できました。
対象が非常に淡いため、特殊な撮影方法を用いました。
撮影したレンズは口径18cm 焦点距離500mm 明るさF2.8です。これにISO感度6400に上げたカメラをつけ、60秒露出で10枚、南北2組を写しました。あとはパソコンのなかで10枚を重ね、重ねてある2枚を1枚に合成し、色彩を整えてあります。つまり、1枚の写真撮影に20分かかっていることになります。
この写真を、「尾鷲の空で見つかったおとめ座のハート形」にします。
「ハート型」はどこに?
「ハート形」はとても淡いため、大型双眼鏡でも見ることができません。81cm望遠鏡では視野が狭くなるため、ひとつひとつの銀河しか見えません。「フラムスチード天球圖譜(1943年版)」にプロットすると、乙女座の右腕付け根あたりにあることがわかります。ただし、ハート形は上下が逆になっており、上が足の方を向いています。
確認のために使った星図はこちら(パロマー写真星図)。
5月にはおとめ座が見やすい位置にやってきます。これからは「この辺におとめ座の〝ハート形〟があるんだ」そう思いながら、ながめることができます。
さて、今回の中村山山頂ドーム発 「最近の星の世界」、
いかがでしたでしょうか。以上、
尾鷲市立天文科学館 天体観測指導員、湯浅祥司でした。
湯浅さん、ありがとうございました!
もとをただせば、すべては
偶然からできているもの……。
それらがカタチとなること自体が、
じつは 「神秘」 と呼ぶに
ふさわしい ものなのかも
しれませんね……。
では 来月も、どうぞよろしくおねがいしま~す♪
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それではまた 次回の 星の世界で!
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